過去連動あり2026-06-11 公開
鉱工業生産指数で動く株はどれか——FA・建機・鉄鋼を25年分のデータで測った
「鉱工業生産指数」は鉱工業全体の生産水準を示す経産省の月次指標です。これと連動する株を25年・前年同月比で測ったところ、製造業の中でも"素直に効く"銘柄と"効かない"銘柄にはっきり分かれました。
結果ランキング(相関係数)
手法は共通仕様の通り(前年同月比変換・ラグ0〜6ヶ月走査・COVID除外チェック併用)。表は各銘柄の最良値です。
| 銘柄 | 全期間 (n=292-304) | COVID除外 (n=268-280) | ラグ | 事業の性格 |
|---|---|---|---|---|
| ファナック 6954 | 0.439 | 0.440 | 同月 | NC装置・産業ロボット |
| 日本製鉄 5401 | 0.412 | 0.332 | 同月 | 高炉鉄鋼(国内主軸) |
| コマツ 6301 | 0.411 | 0.403 | 同月 | 建設・鉱山機械 |
| 安川電機 6506 | 0.315 | 0.321 | 同月 | サーボ・産業用ロボット |
| SMC 6273 | 0.157 | 0.219 | 同月 | 空圧機器(グローバル) |
| 三菱重工 7011 | 0.138 | 0.082 | 同月 | 重工・防衛・インフラ |
効いた銘柄——ファナック・コマツ・日本製鉄が0.4台で噛み合う
ファナック(r=0.439)・コマツ(r=0.411)・日本製鉄(r=0.412)は全期間・COVID除外とも0.4前後で安定した連動を示しました。この3銘柄に共通するのは、鉱工業生産そのものを需要源とする専業性と考えられます。
- ファナック——工場の自動化設備(CNC・ロボット)は製造ラインの稼働率に直接依存します。鉱工業生産が前年比でプラスになる局面は工場が増産モードに入っていることを意味し、設備稼働・更新需要が同時に高まる構造です。
- コマツ——建設機械は製造業の設備投資・工場建設ともリンクしており、鉱工業生産の水準が高い時期は国内外の建設・採掘活動も活発になる傾向があると考えられます。
- 日本製鉄——鉄鋼は製造業全般の材料であり、鉱工業生産の前年同月比と需要が連動しやすい位置にあります。ただしCOVID除外で0.332まで下がる点は注意が必要で、コロナ前後の相場構造の変化が影響している可能性があります。
これらの連動はすべてラグ0ヶ月(同月)が最良値でした。鉱工業生産指数は「今の稼働実績」を示す指標であり、設備投資の発注を捉える先行指標とは性質が異なります(後述)。
効かない銘柄——三菱重工0.14・SMC0.22の背景
三菱重工(r=0.138)とSMC(r=0.157)は連動が小さい結果でした。
- 三菱重工——防衛・宇宙・エネルギー・インフラ等の事業が収益の大きな比重を占めており、製造業の稼働水準とは別の要因(防衛予算・大型プロジェクト・政府契約)で業績が動きやすいと考えられます。COVID除外で0.082とさらに低下しており、鉱工業生産との連動はほぼ確認できない水準です。
- SMC——空圧機器はグローバルに展開しており、国内の鉱工業生産指数よりも世界の製造業全体の動向が業績に影響する比重が大きいと考えられます。全期間r=0.157は低いものの、COVID除外で0.219と上昇しており、COVID特有の歪みが数値を引き下げていた可能性もあります。
機械受注との違い——先行指標と実績指標
機械受注の記事は設備投資の「発注」段階を捉えた先行指標です。企業が将来の増産を見込んで設備を発注した時点の統計が機械受注にあたります。一方、本記事の鉱工業生産指数は工場が実際に動いている「今の稼働実績」を示す同時/実績指標です。
今回の検証でラグが0ヶ月(同月)に集中しているのもこの性質を反映していると考えられます。先行性のある機械受注とは異なり、株価と同期して動く性格の指標です。発表タイミングも翌月以降になるため、この統計を株価の先読みに使うことは構造的に難しく、「どの銘柄が製造業の稼働サイクルに連動しているか」を確認するための参照指標として使うことが現実的と考えられます。
基準日:2026年6月11日。相関は因果関係を保証しません。本記事は統計データの検証結果を示すもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。n(サンプル数)が小さい数値は参考値です。
出典:経済産業省「鉱工業指数(生産・出荷・在庫)」/株価データはYahoo Finance(月次・調整後終値)